2017年5月16日(火)に放送されたクローズアップ現代+。
「生命の不思議”テロメア”健康寿命はのばせる!」でした。
「まだ若いから大丈夫~」ではなく、日々の生活習慣の積み重ねが健康寿命を延ばすというのです!
目次
命の回数券”テロメア”
人はなぜ老いるのか。
若さを保つにはどうすればいいのか。
今年1月に出版されたテロメア研究の集大成「テロメア・エフェクト」という生物学の書籍。
著者は、ノーベル賞受賞者のエリザベス・ブラックバーン博士。
エリザベス・ブラックバーン博士
「健康長寿を手に入れるための重要な要素は”テロメア”です。病気にかからず、生産的に人生を楽しめる年数に”テロメア”という部分が深くかかわっているのです。」
テロメアとは?
わたしたちのカラダは、およそ37兆個の細胞でできています。
生きている限り分裂し、入れ替わり続けています。
例えば皮膚の細胞。
活発に分裂を繰り返し、若い細胞を生みだし続け1~2ヵ月で新たな表皮に生まれ変わっています。
この細胞分裂に深く関わっているのが、細胞の染色体の端にある”テロメア”です。
正体は「塩基」という化学物質。
細胞が分裂するたびに少しずつ数が減り、テロメアは短くなっていきます。
生まれた時は、およそ1万5千ほどとされますが、35歳でおよそ半分に減少。
6,000を下回ると染色体が不安定になり、さらに2,000になると細胞がこれ以上分裂できなくなる「細胞老化」と呼ばれる状態に陥ります。
テロメアが減ると、新たな細胞ができなくなるため、細胞の「命の回数券」とも呼ばれています。
テロメアはどのくらい減っている?
健康が気になるアラフィフ男女10人(47~54歳)の血液を採取し、白血球のテロメアを調べました。
その結果、
同じアラフィフどうしでもテロメアの長さはバラバラ。
35歳相当の長い人から、83歳相当の短い人まで、大きな個人差が出ました。
テロメアの減り方を早めるものとは?
アメリカの最新の研究によって、心理的な「ストレス」がテロメアの減り方を早めていることが解明されました。
介護の年数が長い女性や、強いストレスを感じる心配性の人のテロメアが短いことがわかったのです。
カリフォルニア大学 サンフランシスコ校 エリッサ・エペル教授
「悪いことを予測してしまうタイプ、つまり悲観的な人はストレスに反応しやすく、健康に悪影響があります。10代の若者や健康な人でも悲観的であるほどテロメアが短いことがわかったのです」
テロメア短縮はガンの原因
テロメアとガンとの関係を研究している相田順子さんは、
40代以降のガンの主な原因が「テロメアの減少にある」と考えています。
食道がんの患者から、ガン細胞の近くにある細胞を取り出し、テロメアを調べました。
すると、テロメアが年齢平均より大幅に減り、短くなっていたのです。
東京都健康長寿医療センター研究所 相田順子副部長
「テロメアが短くなってくると、染色体がどうしても不安定になってくるので、遺伝子の変異が起きやすい状態になります。なので、ガンになりやすいというふうに考えられます。食道がんのほかに口腔のがん、すい臓がん、皮膚がんがそうです」
テロメアと認知症
2,000人の脳の画像とテロメアを分析したところ、テロメアが減って短くなった人ほど脳が委縮していました。
とくに、記憶をつかさどる「海馬」の委縮が顕著でした。
ハンティントン医療研究所 ケビン・キング医師
「海馬が縮小すると、認知症のリスクや脳機能が衰えるリスクが高くなると考えられます。テロメアの短縮が、脳の老化に深く関係しているのです」
健康長寿は伸ばせる
<スタジオ>
テロメアと老化・がんなどのを研究する第一人者、京都大学大学院教授、石川冬木さんによると、
「テロメアが短くなると、細胞はやらなければいけない仕事をサボる。例えば、皮膚の細胞はコラーゲンを分泌して皮膚にハリを作るが、テロメアが短くなるとそれをしない。だんだん歳をとると、皮膚がたるんでシワができたりする」
「例えば、たばこをたくさん吸う人は、のどや肺の細胞のテロメアが短くなる。本来やるべき仕事をしないので、だんだん息が苦しくなってきたり、場合によっては肺がんができたりする。テロメアが短くなることは恐ろしい病気につながると考えられている」
テロメアは短くなっていく一方だと考えられていましたが、 エリザベス・ブラックバーン博士たちが発見した酵素「テロメラーゼ」は、テロメアが短くなることを遅らせたり、伸ばしたりする働きがあります。これによって、細胞を若返らせる可能性が出てきました。
簡単にテロメラーゼを増やす方法
アメリカでは、自宅でもできる簡単な方法でテロメラーゼを増やすことができないか実験が行われました。
それは、「瞑想」です。
呪文を唱えながら指先を動かし、頭の中に光が差し込むような光景を思い浮かべるヨガの瞑想。
これを40代以上の女性に毎日12分、2ヵ月続けてもらいました。
その結果、23人のテロメラーゼは平均で43%も増加したのです。
実験を行った、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ヘレン・ラブレッキー教授
「ストレスを受けると交感神経が働き、カラダの緊張が高まります。逆に(リラックスさせる)副交感神経の働きは低下します。瞑想によって2つの神経バランスが良くなり、テロメアにも良い影響があると考えられます」
生活習慣でより大きな効果
日常の生活習慣を変えることでより大きな効果をあげられないか研究をしてきた、予防医学研究所ディーン・オーニッシュ博士。
ガン患者のグループにあるプログラムを実施してもらったところ、テロメアの長さが伸びたのです。
そのプログラムは「瞑想」を含む、4つの要素から構成されていました。
「有酸素運動」1日30分のウォーキングを週に6日行いました。
「野菜中心の食事」動脈硬化などを防ぐオメガ3脂肪酸が豊富な野菜や豆類、精白していない小麦や米を摂るようにしました。
「カウンセリング」週に1度、家族や地域の人間関係の大切さを再認識してもらいました。
ディーン・オーニッシュ博士
「愛情は大切です。孤独で気分が沈んでいる人はテロメアが短く、3倍以上も病気になりやすくて早死にする傾向があります」
この生活習慣プログラムを5年にわたって継続したところ、参加者のテロメアは平均で10%も伸び、ガンの進行も遅らせることができたのです。
ディーン・オーニッシュ博士
「画期的な発見でした。シンプルな習慣の変化がこれほど大きな効果をあげるなんて、みんななかなか信じませんが、本当です。”細胞レベルで若返る時代”の始まりです」
<スタジオ>
テロメアを伸ばす方法として、ノーベル賞を受賞したブラックバーン博士が挙げているのは4つ。
運動・・・筋トレよりも、ジョギングなど軽めの有酸素運動を週3回程度続けるのが有効
食事・・・野菜、魚、海藻がいい。和食。
睡眠・・・7時間以上の睡眠。
人とのつながり・・・友人やパートナーとの良好な関係を保つ。
ストレスとテロメアの関係を研究しているラブレツキー教授は、ヨガの瞑想以外に自宅で簡単にできる「呼吸法」も効果があるのではないかと研究を進めています。
瞑想やマインドフルネスにも詳しい医学博士、石川喜樹さん
「瞑想のメカニズムは不明だが、瞑想はストレス軽減など健康に効果があるという報告が増えてきた。細胞レベルでも効果があるということがわかってきた」
「21世紀の予防医学の大発見は、”孤独はたばこと同じくらい健康に悪いかもしれない”ということ。日本でも、”繋がりが豊かであればあるほど健康で長生きだ”という報告がある。運動や瞑想は自分でできることだが、人と人との関係というのが細胞レベルで影響するというのは本当におもしろい実験」
医療・健康業界も注目
アメリカでは、医療保険の大手企業が、自社の保険加入者10万人のテロメアを計測。大規模なデータベースを作り、病気の予防に役立てることで医療費削減などに繋げたいといいます。
また、健康食品業界でも”テロメラーゼの分泌を体内で促す”というサプリメントが売り出されている。30錠入りのタイプで日本では12,000円程度で売られている。
ブラックバーン博士
「こうしたサプリには賛成できません。長期的に試用されていないからです。もう一つの理由は、テロメラーゼが過剰になると害があるからです。テロメラーゼは心臓病や認知症などの病気のリスクを低下させるのですが、残念ながら(過剰になると)逆に特定のがんのリスクを高めてしまうのです」
<スタジオ>
石川冬木先生
「テロメラーゼを発見したあと、もしかしたらテロメラーゼは不老不死の薬かもしれないとみんな騒いだ。しかし、マウスの背中に人工的にテロメラーゼをたくさん作る実験をしたところ、皮膚は若返ったように見えたが、ガンがたくさんできた。人工的に無理やりテロメラーゼを多くすると悪い副作用が出る可能性が高い。テロメラーゼが増えすぎると、形の悪い染色体がたくさんできることがわかっていて、それが原因になる」
石川喜樹先生
「テロメアの長さで寿命が完全に決まるわけではないということ。今後大規模な調査が進むと、テロメアが短いけれど長生きの人がわかってくる。つまり、健康を決める要因は100も200もあるわけで、テロメアは指標の一つでしかないということは注意してもらいたい」
「私たちは画期的で最新の研究に弱い。でも健康に関しては”最新である”ということは、”検証があまり進んでいない”ということ。”最新”よりも”最前”の情報を見ることが大事。例えば今回なら、運動、食事、つながりなど昔から言われていることと同時に検証が済んでいること、こういう基本的なことを大事にすることが大切」
石川冬木先生
「テロメアの測定を何度も測定して、一喜一憂する必要はないと思う。ただし、たばこの吸いすぎは良くないと言われているけれど、なぜなのかみなさんはよくわかっていないことがあると思う。たばこを吸うとテロメアが少しずつ短くなる、命の回数券の無駄使いをしているというふうに考えると、今までの生活習慣を改善する方向につながるのではないかと思う」
テロメアが長くても、短くても日々の生活を大切にすることが大事ということですね。
ちゃママまとめ
ストレスって本当にカラダに良くないのですね・・・
以前NHKでは「キラーストレス」と題して、ストレスがどれだけ体に悪いかという番組を放送していました。
第1回 あなたを蝕(むしば)むストレスの正体~こうして命を守れ~http://www.nhk.or.jp/special/stress/01.html
第2回 ストレスから脳を守れ~最新科学で迫る対処法~http://www.nhk.or.jp/special/stress/02.html
年金は少なくなるし、老後資金を貯めるのは大変だし、果たして長生きをすることは幸せなのだろうか…という複雑な時代ですが、どうせ長生きをするならばなるべく長く健康でいるということが重要ですよね。
2017年4月4日に書いた【「テロメア」を守れ!100まで生きるセンテナリアンの秘密はこれだ!】でも、テロメアを維持することは大切だと書きましたが、手軽なサプリに頼るのではなく、日々の生活習慣が大切なのですね☆
運動、食事、人とのつながり、そして瞑想。
どれも前向きな気持ちで過ごしながら取り組むことが一番ですね♪
ちなみに、脳科学者の茂木健一郎さんは、
「脳は基本的にプラス思考にできている。そうじゃないと人は死んでいる」
というようなことを本で書かれていました。
たしかにっ!!