【NHKスペシャル】“不登校”44万人の衝撃「イエナプラン」とは

こんにちは、ちゃママです。

少し前の放送ですが、2019年5月30日放送のNHKスペシャル シリーズ 子どもの”声なき声”第2回「“不登校”44万人の衝撃」を見ました。

番組の一部ですが、隠れ不登校、広島県の取り組み、学校教育の最前線(?)「イエナプラン」について紹介します。

最新の調査で年間30日以上欠席した不登校の中学生は全国で10万8,999人。(病気・経済的な理由除く)

不登校予備軍とも言われる”隠れ不登校”の割合は全国で33万人にのぼるとみられています。

不登校と合わせると44万人。全国の中学生のおよそ8人に1人が学校生活に苦しんでいます。

目次

隠れ不登校とは

  • 一週間以上連続欠席(年間は30日未満)
  • 学校の保健室などには行くが教室には行かない
  • 遅刻や早退が多い
  • 学校に通いたくない、つらいと毎日感じている など

不登校・隠れ不登校の理由

番組では2018年度の不登校・隠れ不登校の中学生(1968人)を対象にLINEでアンケートをとりました。

「学校に行きたくない」理由を複数回答で聞いたところ、2つ以上挙げた生徒は49%。35%が3つ以上挙げました。

・クラスに友達がいない。コミュニケーションがとれない。宿題ができない。眠い。授業がわかりにくい。先生がしっかりしていない。(中3女子神奈川)

・流暢にしゃべれなかったり、存在が薄いことを執拗にからかわれ、幽霊と呼ばれて避けられた。(中3男子滋賀)

・先生が友達のうそを信じて私に怒ったことです。何回違うと言っても「うそはつかなくていいから。友達のことを信じる」と言われ、友達に裏切られた悲しみと先生の信頼を失った悲しみで、学校に行くのがつらかった。(中2女子佐賀)

・課題が多くて終わらない。終わらないと怒られる。時間なくなるし気分も下がる。あんま心を許せるような人がいない。(中3男子)

教育学者苫野一徳さん
「みんなで同じことを同じペースで同じようなやり方で、同質性の高い学年・学級制の中で出来合いの問いと答えばかり勉強するという今まで私たちが当たり前だと思っていたシステムが大きな問題。

今の学校の問題は3つ。

1つ目は”細かなルール”
頭髪が生まれつき茶髪なのかどうかを調べたり、下着を色を白で統一させたり、筆記具の指定や筆記具を置く場所まで決めたりしているところもある。

2つ目は”学力向上至上主義”
全国学力テストが再開されてから、いろんな自治体が学力を上げるよう先生たちのお尻を叩いている。安易なやり方として規律とドリルを徹底することで短期的に学力を上げるということがありうる。すると子どもたちがますます嫌になってしまう。

3つ目は”教師の多忙化”
小学校で3割、中学校で6割の先生が過労死ラインを超えている。こういう状況で先生が子どもたち一人一人をケアしたいと思っても実状は難しい。システムが限界を迎えていると言わざるを得ない。」

「学校に行きたくない」と思うようになった原因

クラス全体の空気が嫌…44
学校の勉強についての悩み…36
いじめを除く友人関係…29
先生との関係…23 (文科省調べ2.2)
学校のきまりや校則…21 (文科省調べ3.5)
いじめを受けた…21 (文科省調べ0.4)

下の3つは、NHKの調査と文部科学省の調査とで最大で50倍もの開きがありました。

これは、子どもにとっての不登校の原因が学校や先生にとっての原因と全く違うということです。

校内フリースクールという取り組み

広島県では病気や経済的な理由を除き、年間30日以上欠席する不登校の中学生は2,149人。
それをはるかに上回る数の隠れ不登校の生徒がいるとみられています。

しかしその理由は学校や教育委員会も十分に把握できていません。

広島県教育委員会平川理恵教育長
「私は不登校というのは子どもができるボイコットだと思っている。」

平川さんは就任直後から県内の学校に足を運び、現場の課題を探ってきました。

大手の民間企業を経て、8年間横浜の公立中学校の校長を務めた平川さん。
独自の不登校対策で注目を集めました。

学校の中に校内フリースクールという場所を作ったところ、30人いた不登校の生徒がそれぞれのペースで学校に通うようになったのです。

平川さん
「これだけ不登校が多く、仮面登校(隠れ不登校)と言われて”学校に来ているけれど学校は楽しくない”と感じているお子さんがいる。

できればすべての学校にこういう緩衝材になるような、いろいろなことを認める場所があってもいいのではないか。」

番組では、校内に「ふれあいルーム」というフリースクールを作った広島県福山市立城東中学校に1年間密着しました。

ふれあいルームでは登下校の時間や学ぶ内容を生徒自らが決めることができます。

さらに、経験豊富な男性教師と教室に入れない生徒をケアしてきた支援員が、専属で担任を務めています。

ここに通うようになった生徒は12人。
教室に戻すことが目的ではなく、自分のペースで学校生活を送れるようにするのが狙いです。

家族の事情で昼夜逆転の生活になっていた男の子。
友人関係に悩み、教室に入るとめまいや吐き気がするという女の子。
文字の認識や文章の記述に時間がかかり、周囲にからかわれて教室に入れなくなった男の子。

不登校になった理由はさまざまですが、ふれあいルームで自分のペースを尊重してもらえるようになった男の子は、周囲と進んでコミュニケーションをとるなど、苦手だと思われた集団生活の中でも積極的に行動するようになりました。

一人一人の個性や実状に寄り添うことが、大きな成長につながったのです。

LINEのアンケートでは「あなたの学校にも校内フリースクールがあるといいと思いますか?」という質問に、「いいと思う」「まぁ思う」と答えた人が78%にのぼりました。

苫野さん
「2年前に教育機会確保法という法律が施行されたが、認知度が低くて先生方の中でもご存じない方がいる。保護者ならなおさら。

どうしても”教室に戻すことが正しい”という価値観が続いているので、ますます子どもたちは追い詰められてしまう。

一人一人学びの環境、自分に合った環境や成長できる場は違うので、それを1つの枠の中に押さえ込むのは苦しいことだと思う。

みんなで同じことを同じペースで学習すると”落ちこぼれ吹きこぼれ問題”が構造的に生まれてしまう。

一度ついて行けなくなったら落ちこぼれてしまうとか、もうすでにわかっていてつまらないことを何度も繰り返し勉強させられるので勉強がイヤになってしまうとか、みんな一緒というのをそろそろ考え直さないといけない。」

教育現場の試行錯誤

平川さんは福山市のような校内フリースクールをこの4月から広島県内の10校に新たに導入しました。

平川さんは”不登校を考えることは、学校を考えることに他ならない”と、教育現場の見直しをさらに進めようとしています。

そのために、海外の事例を県内の教育関係者に紹介し、議論を続けてきました。

平川さん
「本当に今の日本の教育が21世紀を生きる未来の子どもたちのためになっているか。」

しかし、従来の学校の在り方を支持する声も多く、答えを出すのは容易ではありません。

平川さん
「今までのやり方も悪くはない。これで成果も上げてきたが、やはり画一的な一斉的な授業しかないというところから脱却をしていかなくてはいけない。

みんなでやるという部分も大事だが、ある部分は個別最適化していくことが大事なんじゃないか。」

イエナプランとは

去年の秋、平川さんは教育委員会のメンバーとともに海外の教育現場を視察しました。

オランダで普及しているイエナプランという教育。

日本の学校と大きく違うのは、異なる年齢の生徒で編成されるクラスです。

イエナプランでは何通りもの教材やカリキュラムが用意され、自分に合う学び方を選んだ子どもを教師がサポートします。

学習の進捗は定期的に行われる試験などではかります。

子どもたちの特性やニーズに合わせて、学習のペースや学び方は柔軟に変わります

オランダも以前は日本のような授業がほとんどでした。

しかし、勉強について行けない子どもが増えたことへの反省から、柔軟な教育システムが広がったのです。

視察先の先生
「学校に行きたくなくて家にこもっているような子どもはイエナプランの学校では見たことがありません。

学校とはみんなが幸せになれる場所です。不登校の子どもがいるということは何かがうまくいっていない証拠なのです。」

オランダでは通う学校も自由に選べるため、馴染めなければ転校するという選択肢もあります。

しつけや指導が厳しい学校からイエナプランの学校に転校してきた男の子。

男の子
「ここの先生は怒鳴りません。前の学校の先生は怒ってばかりでした。ここは自由に勉強ができるし、好きなことができる。」

日本でもイエナプランは可能

視察した教育委員会のメンバーの中には、日本とは全く異なる学校の在り方に戸惑う人もいました。

視察後の食事の席。

広島県教育委員会指導主事の黒小さん
「後ろやコーナーに座って好き勝手にバランスボールに乗りながら、自分なりの勉強をする姿が本当にいいんですかね?」

平川さん
「悪いの?」

黒小さん
「それじゃぁ好き勝手にする子が出てこないですか?」

平川さん
「そこでたぶんみんなが引っかかるから、きっちり議論しておかないといけない。」

黒小さん
「そういうことにつまづいて先人は学習規律を作らないといけないとやってきたと僕は思っていた。」

平川さん
「もちろんそれで合っている子もいる。でもどんどん合わない子が出てきているのが不登校だと思う。子どもにボイコットされているんだと思う。」

広島県教育委員会教育指導監石川さん
「学校制度そのものが崩れる。」

福山市教育委員会教育長三好さん
学校を守るために子どもの教育や学校があるわけではない。子どもに必要だから学校がある。」

どうすれば生徒一人一人の実情に応じた学校をつくることができるのか。
教育現場の模索が続いています。

苫野さん
「私もイエナプランの教育現場を視察した。日本では無理だとよく言われるが、全くそんなことはない。
子どもたちの学びが個別化されていて、時間割も自分で立ててやっている。
異年齢で必要に応じて必要な人の力を借りながら、必要な人に力を貸しながら緩やかな共同に支えられて個の学びが尊重されている

日本でも制度上、妨げるものは何もない。時間割をみんな一緒にしなければいけないなどの規定はない。単に慣習上、みんなと同じことをやらされているという話。異年齢もできる。やり方を知らないだけ。
自分たちが受けた教育が当たり前だと思い込んでいる。そうではない教育は国内外にたくさんあるので知ることはすごく大事。」

スタジオトーク(ラスト一部)

平田オリザさん
「日本は近代化の過程で、この細長い国土のどこでも・誰が教えてもだいたい同じような学力がつけられるというものすごいシステムを作り、150年やってきた。

これが富国強兵や戦後の高度経済成長期を支えてきて成功している。

イエナプランで今の学力を維持しようとしたら、恐らく倍の教員が必要だと思う。僕はそれをすべきだと思う。

やはり教員をとにかく増やして、教員を忙しさから解放する。ヨーロッパの教師たちは15時くらいには子どもが帰るので翌日の授業の準備もできる。

日本の教員はまだまだ優秀なので、誇りをもって教育に当たってもらいたい。

その社会の制度の部分と、一人一人いま苦しんでいる子どもたちへの対応は別。
ごっちゃになると議論にならない。学校でやれることと個別の子どものケアを分けて両方やるべき。」

苫野さん
「先生の負担を減らしたり、先生を増やしたりすることは大切だが、イエナプランは共同の学び合いの力をダイナミックに使うので、意外に先生の負担は低くなる。
オランダも平均30人くらいのクラスなので、日本でもできないことはない。」

平田オリザさん
「教育はトレードオフなので、英語も入れないといけないプログラミングも入れないといけない不登校対策もしなければいけない、その中で何を優先順位にするか。僕は8人に1人がこういう状況にあるのだったらそこを優先するべきだと思う。」

ちゃママ感想

学びたいという気持ちはあるのに、学校が選べない、先生を選べない、友達を選べないという今の教育システム。

長野県に新しい学校を作ろうとしている苫野さんによると、

「いま多くの場所でさまざまなプロジェクトがあり、同時多発的に構造転換が起こっているのできっと変わっていく」

ということでした。

これからは「個の時代」と言われています。

平均的ではなく特化型の人になれるよう学びをカスタマイズできたらいいですよね。

全国の公立小学校、中学校が大きく変わる日はいつくるのでしょうか。

いまの息子の担任の先生は「型」にハメたがる感じなので、まずは学校の先生の意識改革が必要な気がします。。

不登校、教育機会確保法については以前の記事も参考にしてください。

子どもの不登校は、最初の親の関わり方がとても大切です。

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