こんにちは、ちゃママです。
2017年6月4日(日)NHKスペシャル「#子どもたちの未来」を見ました。
先進国の中で「自分の将来に希望を持っていない」と答えた子どもたちの割合が一番高い日本。
日本の子どもの貧困率は、30年にわたって上昇。いまや過去最悪、6人に1人が貧困状態に置かれている。
しかも、ひとり親家庭に限って言えば、2人に1人が貧困で、先進国の中でも最悪の状況。
そんな中でも、解決のヒントは見えてきているといいます。
現状と解決への道とは?
VTRを中心にギュッとまとめてみました。(注:スタジオトークはほぼありません)
目次
相対的貧困と日本の将来
相対的貧困とは、日本全体で、収入の少ない人から並べていったときに、真ん中にあたる人の半分に満たない収入で暮らしてる状態。
4人家族だと、年収244万円未満が基準。
一般家庭の子どもなら当たり前にできる部活動や塾に通う余裕はない。
こうした貧困は、子どもたちの心の中にまで影響を及ぼしていく。
「頑張れば報われると思うか」という質問に、思わないと答えた貧困の家庭の割合は、標準的な家庭の1.5倍。
「自分は価値のある人間だと思うか」という質問には、思わないと答えた割合が2倍近くにのぼった。
お金がなくて物が買えないだけでなく、経験や教育も得られない。
精神面にも影響を与え、貧困状態にある子どもたちから未来への希望も奪われている。
さらに、子どもたちが未来への希望を失うことの影響は社会全体にも及んでいる。
国も”今の状況を放置すれば、日本の未来を支える人が支えられる側になってしまう”と警鐘を鳴らしている。
たとえば、子どもの進学や就労のチャンスが十分にあれば、大人になってから所得の高い仕事につけて、そのぶん税金も多く納めてもらえる可能性が高い。
つまり、社会全体を支えてくれる担い手になってもらえる。
でも逆に、子どもたちが貧困などによって十分な教育の機会を得られなければ、大人になってからの所得も低くなり、納める税金も少なくなって、財政への影響が出かねない。
それだけでなく、生活保護など社会保障で支えることが必要になるかもしれないということ。
民間の財団による試算では、子どもの貧困を放置した場合、大人になってから手にできなくなる所得は、全体で42.9兆円。
さらに、所得が減ったぶん税収も失われ、その総額は15.9兆円にも及ぶと試算されている。
就学援助率とは
ある県が、公立の小中学校で「就学援助率」つまり、経済的な理由で学用品代などの援助を受けている子どもの割合を調べた。
すると、同じ県内でも、学校によって大きな差があった。
たとえば、300人のうち1人しか援助を受けていない学校もあれば、半数以上が受けている学校もあるということ。
こうした差が貧困の問題を共有させにくくしている。
子どもたちへの支援の現状
社会保障給付の中で、児童手当など子育て世帯向けがどれくらいあるのか。
ヨーロッパでは、GDPの3%前後をかけているのに対し、日本は1.3%とイギリスの3分の1。
さらに、日本での給付額の推移を過去30年で見てみると、子育て世帯向けの給付は少しずつ増えているけれど、年金など高齢者向けの給付と比べると、子育て世帯向けは高齢者向けの8分の1に過ぎない。
こうした中、こんな現象が起きている。
1985年の男性の貧困率を年齢層別に示したグラフでは、高齢者の貧困率が高かった。
ところが、27年後の2012年のグラフでは、高齢者の貧困率は下がったのに対し、子どもの貧困率は上がってしまっている。
似たような傾向が女性にもいえる。
専門家は子どもへの支援を増やすためには、社会全体で合意を作る(優先順位をつける)ことが課題だと指摘している。
イギリスの大改革
思い切った対策で子どもの貧困率を劇的に下げた国、イギリス。
イギリスでは80年代に入って、景気の低迷や格差の拡大で貧困率が急激に上昇。
90年代には25%、4人に1人の子どもが貧困という状況が続いた。
そこで立ち上がったのが当時のトニー・ブレア元首相。
「2020年までに子どもの貧困を撲滅する」と宣言して、さまざまな支援策を打ち出した。
まず、職業訓練など、親の就労支援。そして、貧困の家庭が多い地域での保育サービスの拡充。さらには大胆な現金給付。
たとえば16歳未満の子ども全員に支給される児童手当は、1.6倍に。
子どもが生まれるごとに親に積み立て用の口座を作らせ、政府はそこに現金を給付する仕組みまで作った。
こうした対策への支出は、現金給付だけでも年間およそ6兆円。それまでの2.6倍に及ぶ。
一連の対策によって貧困率は、15年間で10%減少。110万人の子どもたちが貧困から抜け出せたことになる。
こうした支援策は他の国でも効果があるのか、専門家が先進国について分析したところ、
児童手当をGDP比で0.1%ぶん引き上げれば、子どもの貧困率を0.6%減らせるという。
一方、日本でGDPの0.1%ぶんほどを投じるとすると、かかる費用は年間5,000億円にのぼる。
実はイギリスでも財政赤字が膨らみ、毎年続けてきた現金給付の拡充を辞めざるをえなくなった。
支援を進めていくためには
こども保険
こども保険とは、働く人や企業から新たに保険料を徴収し、それを子育て世帯に給付しようという構想。
例えば、賃金の0.1%、月収30万円の人なら月に300円を徴収すれば、年間3,400億円が確保できる。
児童手当を一人当たり5,000円あげられるという。
他にも各政党からは、使い道を限定した教育国債や子ども国債を創設して、教育や子どもへの支援を充実させようという意見があがっている。
ふるさと納税
ふるさと納税は、自分の出身地や応援したい自治体に寄付することで、住民税などが控除される仕組み。
受け入れる自治体によっては、寄付する人が使い道をいくつかの事業から指定できる。
前橋市では今年3月、タイガーマスク運動支援事業が加わった。
これを指定すると、児童養護施設から自立する子どもたちの支援に使われる。
受付が始まって3ヵ月。すでに900万円の寄付が集まった。
アイディアはたくさん出てきたが、実際に前に進めるためには乗り越えなければいけない課題がある。
選挙に行こう
まずは若い世代が投票に行くこと。
日本では高齢者になればなるほど投票率が上がるため、高齢者向けの政策が通りやすい。
日本以外の先進国では90年代から若者の意思決定の参画が大きな若者政策の柱になっている。
例えばイギリスでは、一部の自治体で13~19歳の子どもたちによる議会(ユース議会)が開かれている。
地域の課題やその改善策を話し合い、彼らの意見が実際の政策に活かされている。
未来を担う子どもたちの声を政治に反映させることで、よりよい社会の実現を目指している。
貧困の連鎖を止める
保護者の年収別に見た大学への進学率のグラフ。年収が低いほど進学率が低い。
年収200万円以下では28%。800万円を超える層の半分程度にとどまる。
学歴の差は、年収に大きく影響する。
学歴別の年収を比較すると、中学卒の人は大学卒の人より40%ほど少ない。
つまり、貧困世帯の子どもは進学率が低く、将来の所得も低くなってしまい、貧困から抜け出せない可能性があると指摘されている。
就学前教育が最も重要
解決のカギを明らかにしたのが、ノーベル賞を受賞した世界的な経済学者ジェームズ・ヘックマン教授。
貧困の連鎖を食い止めるには、就学前、つまり小学校に上がる前にきちんとした教育を受けることにあると実証した。
ヘックマン教授
「生きていく上で必要なのは、学力だけではありません。人生を成功させる能力を身につけるには”就学前教育”が最も重要なのです」
ヘックマン教授が分析したのが、アメリカで1962年から行われた「ペリー就学前教育プログラム」。
低所得の家庭に育つアフリカ系の3歳と4歳の子どもたち123人が対象。
彼らを2つのグループに分け、片方にだけ1日2時間半の授業や、週に1回の家庭訪問を2年間行う。
そして、その後を40歳になるまで追跡した。
すると、2つのグループには大きな違いが生まれていた。
まずは収入。
日本円で月におよそ22万円をもらえる人の割合が、就学前教育を受けた人は29%。受けなかった人の4倍にのぼった。
さらに、持ち家率はおよそ3倍。
ヘックマン教授は、学力ではない「やる気」や「協調性」、「忍耐力」などが差を生んだと分析。
これらは「非認知能力」と呼ばれ、幼いころのほうが身につきやすいと言われている。
このプログラムで繰り返し行った、課題を自分で決め、計画を立てて実行し、結果を振り返るという訓練が、この能力を養ったという。
こうした「非認知能力」が身につけば、不利な状況に打ち勝ち、貧困の連鎖から抜け出すことができるとヘックマン教授は指摘している。
ヘックマン教授
「非認知能力はやる気を促し、人生の可能性を広げる極めて大切な能力なのです。いま貧困状態にある子どもたちは、将来すばらしい芸術家や優秀な数学者になるかもしれません。世界や日本で活躍する人材になる可能性があるのです」
さらに、就学前教育がもたらす利益は、社会全体に及ぶ。
ヘックマン教授が分析したプログラムでは、所得や納税額が増加。
その効果はかかった費用の16倍にのぼったと試算されている。
また、同じ額を投資したときの利益は、若ければ若い時ほど高くなる。
つまり、就学前教育は長期的に見て、社会全体が得をする効率のいい投資でもある。
ちゃママまとめ
データで出ていることに対して、つくづく日本は遅れているなと思いますね…
2020年に教育改革が行われますが、就学前教育に関しても、いち早く改革が必要ですね。
スタジオでは「保育園や幼稚園を義務教育にすればいい」など、さまざまな意見が出ていました。
「非認知能力」は、幼稚園などの集団の中で育つこともたくさんありますが、家庭での働きかけもとても大切ということですね。
ちなみに、人生で成功するために特に重要な非認知能力としては「自制心」と「やり抜く力」だと本で読んだことがあります。
自制心は、感情や欲望などをコントロールする精神力のこと。
やり抜く力は、非常に遠い先にあるゴールに向けて興味を失わず、努力し続けられる気質。
わたしは息子の「非認知能力」を育ててあげられているのだろうか?
と、目に見えないことなので、少し不安になりました。