あなたは”プログラミング教育”というと、どんなことをするかわかりますか?
2020年度から、英語教育が大きく変わるということは、
4月29日(土)放送のウワサの保護者会「早期化する小学校の英語教育」レポで紹介しました。
実は、2020年から実施される教育改革の中で、自発的に学ぶ力を伸ばす「アクティブ・ラーニング」、「英語教育の早期化」と並んで注目されているのが、「プログラミング教育の必修化」なのです。
プログラミングとは、コンピューターに指示を出して自分の思うように動かしていくことです。
目次
将来の子供たちのため
プログラミング教育に関して、スタジオの保護者は「全く知らない」「目が悪くなりそう」「息子が教室に通っている」などさまざまでした。
今回の教育改革は、文部科学省だけでなく、総務省と経済産業省がタッグを組むという一大プロジェクトです。
ではなぜプログラミング教育が必要なのでしょうか?
総務省の情報通信利用促進課の御厩祐二さん
「これからの世の中では、人工知能とかロボットとか新しい技術が出てくると思う。
今まで人間が担っていた仕事が、取って代わられて無くなったりする。
人工知能にしてもロボットにしても、元をたどれば人間が必要な指示を与えて動くようにプログラミングした、プログラミングの産物でもある。
ロボットや人工知能とうまく共存しながら一緒に生きていくうえで、それらを動かす基本的な原理ということでプログラミングを学ぶ必要がある」
世界ではすでにさまざまな国でプログラミング教育が始まっている。
アメリカでは2013年にオバマ大統領がメッセージを発表。
オバマ前大統領
「プログラミングを学ぶことは、自分のためだけではない。国の将来がかかっている。新しいゲームを買うだけではなく自分で作りましょう」
イギリスでは5歳、フィンランドでは7歳からプログラミング教育が必修化されました。
教科にはならないプログラミング
高山アナウンサー
「子供たちは将来自立して仕事に就く。Webビジネス市場はどんどん拡大していて、2011~2020年で4.5倍に拡大するという経済産業省の試算もある。そこには人材が必要でニーズがあるから、小さいころから慣れ親しんだほうがいいのではないかということ」
保護者
「外資系で働いていた時に、ITの方は日本人が一人もいなかったので、日本は遅れていると思った。英語もそうだが、中学校になると勉強だと構えてしまうので、小学生だと抵抗がなく楽しいと思えるのではないか」
保護者
「わたしは反対。興味を持てばどんどんやれるし、興味がなければ手を抜いて遊びの時間になってしまう。中学、高校あたりで選択制でいいのではないかと思う。小学生のうちは、人間力とか情操教育とか中身をもっと育てるような教育に力を入れた方が良いと思う」
保護者
「今でもカリキュラムはいっぱい。他を削ってまでやるほど優先順位が高いのかな?」
学習指導要領の改訂案によると、今回の必修化で「プログラミング」という教科が増えるわけではない。
算数や理科、総合的な学習の時間の中に取り入れて教えるということが提案されている。
その狙いは、プログラミング的思考を身につけること。
プログラミング的思考を体験
では、具体的にどうやって教えていくのか。
全国でプログラミング教育の導入をサポートしている平井総一郎さん(元 古河市教育委員会参事)にスタジオで実際の授業の例を見せてもらうことに。
平井さん
「今日やるのは”コンピューターを使わないプログラミング”(Unplugged Computer)です」
授業のミッションは、高山ロボに扮した高山アナウンサーが、カップにコーヒーを注ぎ、椅子に座ってコーヒーを飲めるように指示を出すというもの。
平井さん
「ロボットに1つ1つ命令を出してもらいます。最初の命令はどうすればいいでしょうか?」
スタジオの保護者たちが、高山ロボの動きを想像しながらコーヒーを飲むまでに必要な行動を言葉に変えていく。
保護者が考えた指示は全部で13。
果たして高山ロボはコーヒーを飲めるのか実演。
3つ目の指示「右手で持ち手をつかむ」だけでは、ポットなのかカップなのか何の持ち手をつかめばいいのかわからない。
「ポットの」を足して、正確に指示することが必要。
6つ目の指示「ポットを45度傾けてください」では、ポットを傾ける方向が指示されていないため、どっちに傾けていいのかわからない。
高山ロボがコーヒーを飲むためには情報を正確に順序立てて伝えることが必要だった。
保護者
「これだけたくさんいろいろと書かないと、ロボットは動いてくれないというのが、初めてプログラミングらしきことを体験してわかった」
尾木ママ
「家庭でお母さんたちは”ちゃんとやりなさい”と言うが、”ちゃんとやるってどうやればいいの?”と子供たちは思っている。お母さんにもすごい役に立つと思った。親子関係を変えるきっかけにもなるし、これなら家庭でもできる」
課題を解決するためにどんな手順を踏めばいいのか、論理的に考えること。
それがプログラミング的思考なのです。
平井さん
「プログラミングは何の教科なのか。自分の考えていることをきちんと相手に伝えるには、ちゃんと言わないとわからない。”学級活動”や”道徳”に通じるものがある」
プログラミングは総合的な学び
すでにプログラミング教育を取り入れている学校もある。
千葉県柏市立大津ヶ丘第一小学校。
柏市では、2020年度の必須化に先駆けて、今年度からすべての小学校でプログラミング教育を導入した。
今回取材した6年生の授業の課題は「新一年生に教室や場所を紹介する」こと。
課題を解決するために、論理的に考える力をつけることが授業の目的。
まず、担当する教室ごとに分かれ、1年生にどうやって伝えるかを考える。
プログラミング教育では、課題を解決するためにはどうすればいいのかという子供たちの発想力も育まれていく。
みんなで話し合ったり、素材の写真を撮影したり、音を録音したりする。
翌日、集めた素材を作ってプログラミングを始める。
教えるのは担任に加え、柏市から委託を受けたIT教育の専門家。
子どもたちが使うのは、指示の書かれたブロックを組み合わせてプログラミングできるソフト。
たとえば、「ずっと」に「10歩動かす」を組み合わせる。すると、指示されたキャラクターはずっと10歩を繰り返す。
視覚的に操作ができるので子供たちにも簡単。
カーソルを合わせると写真や文字が表示されるというプログラムを使い、それぞれの場所に何があるのか紹介する。
思いついたことを実現するために、プログラミングの中で試行錯誤を繰り返す。
プログラミング教育は、パソコン操作だけではない総合的な学びなのです。
保護者
「てっきりツールを作ったり、システムを構築するのがプログラミングだと思っていたが、考えが変わった」
保護者
「やる価値があると思った。1年生のためにという”思いやり”や、みんなでアイディアを出し合ったり話し合ったりすることで、アウトプットのセンスが磨かれるし、自由にやれる感じがすごく良かった。出来上がったものに対する達成感もあると思った」
保護者
「息子の小学校が同じような形でやっていた。チームワークを学んだり、当然、葛藤があって”俺はこれが撮りたいのに、でもこっちだよ”って、またそこで話し合いができたりと、息子にとっては勉強になっていると思う」
尾木ママ
「子供たちが自分で自主的にアイディアを出し合って、対等な関係に見えた。協力したり実験したり、友だちの捉え方が複眼的になる。考え方そのもの、発想そのものの多様性が可視化されるというのは、今まではあまりなかった」
プログラミング教育の課題
2020年からの小学校での必修化は決まっているものの、その教育方法は決められていない。
何年生のどの教科で、どれくらいの時間を費やすのか、具体的な導入方法は各学校に任されているというのが実情。
尾木ママ
「現場への丸投げ。力量差が校長の段階でつくし、市の教育委員会の段階で変わってくる」
鍵となってくるのは地域との関わり。
専門的な知識を持った保護者や地域の人々が、学校と連携して子供たちを支えていくことも大切。
スタジオにいるシステムエンジニアの保護者ショーグンさんは、かつて保護者が集まるおやじの会で、プログラミング教室を主催した経験がある。
プログラミングを学ぶ子供たちの顔を見ていて、あることに気がついた。
ショーグンさん
「遊んでいるときの子どもは目が輝いている。学んでいるときは、さらに目が輝く。プログラミングはいろいろな動かし方があって、それを自分で動かせるところが遊びのようだが、実は学んでいる」
そんな子どもたちの姿を見て、校長先生がプログラミングに興味を持ち、授業に取り入れることになったという。保護者の試みが教育現場を変えた一例。
保護者
「先生がすごく大変になってしまうと思っていたが、地域の方が助けるという手があったのならどんどんやってもいいと思った」
保護者
「家でフォローできることはやりたいと思った。さっきの授業を帰ったらやってみようと思った」
尾木ママ
「未来のために教育は変わらないといけない。まずプログラミングとは何なのかを知って、小学校の現場はどうなっているのかを知って、みんなで関心を寄せて見ていかないといけない」
(番組終了)
スクラッチを体験してみる
今回紹介された小学校で使っていたのは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)が教育用に開発し、公開している「Scratch(スクラッチ)」というソフトです。
↓こちらのページを開いたら、「やってみる」をクリックすることで簡単にやってみることができます。
https://scratch.mit.edu/
また、初心者の方でもプログラムの内容が見られるようになっています。
「例をみる」をクリックすると、アニメーションやゲームなどの作品が載っています。
緑の旗が再生、赤の丸ボタンが停止です。
「中身を見る」をクリックすると、どのようにプログラミングしたのかを知ることができます。
どのようなものなのか知るために、秒数や回転方向を変えるとどうなるかなど触ってみるのもいいと思います。
ちゃママまとめ
わが家では、Eテレの「Why!?プログラミング」を見て、息子も「やってみたい」と言ったので、何度か一緒にやってみたことがあります。
見よう見まねでやってみましたが、実際に自分が思っていた通りに動かすことができると、達成感があると感じました。
学校によってどのように教えるのかが変わるということが一番の心配ですが、今の校長先生がしっかり考えてくれていることを願います!