偶然、開成中学・高等学校の校長だった吉野俊彦さんが書いた本を借りました。
図書館で、いつもと違う棚の前で立ち止まったところ、なぜかキラリと目に飛び込んできました。
まぁ、地方に住んでいるし、ほぼ無関係の学校ですが(笑)、チラッと立ち読みをしたらなんだかおもしろそう。
ちょっと興味本位で読んでみました。
開成学園といえば、毎年、東大入学者が最多の進学校。
つい先日、
という話を書きましたが、この本にもリーダーに関して書かれていました。
息子はまだ小学校に入ったばかりなので、中学・高校はまだまだ先のことですが、気になった部分をメモ書き的にまとめました。
目次
リーダーのタイプは3つ
リーダーとは、自ら目標や手段を切り開き、先頭を走っていく人であり、すなわち、開拓精神と創造力が求められる。
また、物事を的確に分析し、課題を解決する能力が必要で、すなわち、深い専門性と大局観を持つことが求められる。
そのような素養のもととなるのが、確かな基礎学力と幅広い教養。
そしてサービス精神が必要。
1.太陽光線タイプ
あまねく地球を照らして恵みをもたらし、人々に穏やかな安らぎを与える太陽光線。
そんなふうにチームを穏やかに見守り、活力を与えるタイプのリーダー。
2.レーザー光線タイプ
非常に鋭く、鉄板をも通す強さを持つレーザー光線は、太陽光線の対極にあると言ってもいい。
自らの局面を切り開き、「俺についてこい」とぐいぐい引っ張っていく。
見るからにも頼もしいタイプのリーダー。
3.灯台のようなタイプ
みんなの指針になる。その人を目指して、みんな安心して進んでいける人。
本人は自己主張せず、暗闇の中でただ光っている。
陰ながら「すごいなぁ」と言われるタイプ。
どちらかというと孤高を保ち、おしきせがましくない。
ただし、そこにいないと、船舶や飛行機が安全に運航できない。
いずれも立派なリーダー像であって、ひとりひとりの個性。
理想はすべてを兼ね揃えていて、TPOによって使い分けることだが、いずれかのタイプが極まったという者が出てもいい。
それぞれのタイプにコミュニケーション力が備われば、立派な指導者になるだろう。
リーダーのタイプは必ず3つのどれかにおさまるので、漠然と「リーダーになれ」というよりも目標にしやすい。
目指すものがはっきり見えると、取り組みやすく、安心するもの。
知・心・体の体積を伸ばす
本当のリーダー、その道の第一人者になるのは、基礎をしっかり固めた人。
精神的に柔軟で、エネルギーにあふれた中学・高校という時期に、しっかり基礎教育を積み重ねることは大切。
そのような教育の根本となるのが「知・心・体」。
「知」は知性
深く考え、洞察する。
物事を論理的に考え、納得し、自分の言葉で表現できる能力を、日々の学習を通して養う。
この積み重ねによって、パイオニア的な分野にも勇気を持って取り組める知力が備わる。
「心」は精神
挑戦力、勇気、たくましさとともに、弱者を守るやさしさも必要。
あえて「徳」と言わないのは、「徳」にはその時代の価値基準が反映されるから。
個人に根付いた、時代も国も越えた普遍的な精神、それが「心」。
「体」は身体
中国の格言に「人生における最大の富は健康である」とあるように、どんなに知的能力に優れていても、健康でなければ思うように活躍できない。
行動力や実践力がものをいう実社会では、最終的に体力で決まる場合も多い。
この「知・心・体」の3つはバラバラな存在ではなく、どれが欠けてもダメ。同等の価値がある。
数学の三次元の座標軸、X、Y、Zに「知・心・体」を当てはめてみてください。
この3つの軸が伸びると、そこに体積が出てくる。
この体積が大事。
生徒の個性に応じて軸のひとつが突出することもあるが、ほかの2つの軸も伸びないことには、体積はいつまでも小さいまま。
人間としての器は、この体積に比例する。
体積が大きな生徒を育てたい。
自学自習を習慣づける
勉強の仕方には2通りの姿勢がある。
ひとつは従属的、受動的な学習方法で「習得する」「覚える」という意味を持つ英語の「learn」。
もうひとつは、主体的、能動的な学習方法で「学問する」「研究する」という意味を持つ「study」。
自学自習はこの「study」に通じる。
スポーツにおいても、監督やコーチに言われたとおりlearnすることに手を抜いてはいけないが、技量を本当に向上させるためには、どうしたら最良のプレーができるのか考え、イメージしながら工夫すること(study)が不可欠。
勉強も同じ。
課題について主体的に、深く考えてみる。
解答にたどり着くまで時間はかかるし、正答が出ないかもしれないが、自分で調べ、あれこれ考えることに意味があるし、勉強していくことが面白くなる。
創造とは、ほかの人がやっていないものにチャレンジすること。
何か新しいものを目指すこと。
でも、失敗するリスクもあるし、時間がかかるので、要領の良さとは相反する。
それがわかっているので、要領の良い子は創造的なことに手を出さないが、本校が目指す学校教育は創造的な精神を養うところにある。
自学自習の習慣をつけ、困難が生じても立ち向かい、独創的な課題を達成するという力を植え付けたい。
小学生時代から心がけること
子どもが何かしようとしたとき「やめておきなさい」と親の目線でフィルターをかけてしまうのは望ましくない。
「やりたい」という意欲は、生命力の発露。
見ていてハラハラ、イライラするが、これに対して安全本位の消極的な、あるいは否定的な反応ばかりしていると、子どもが自ら体験したり、コミュニケーションをとったりするチャンスを奪う。
親がレールを敷いてしまうのも考えもの。
時と場所、場合に応じてだが、子どものことは心配でも、しばらく黙って様子を見て、好きにさせる。
自己責任で体験させることで、子どもは精神的な抵抗力や免疫力をつけ、結果として生命力が強化される。
体系的な学問の基礎を教えるのが中学・高校時代であるとすると、興味、動機、感性を養うのが小学校時代。
まだ世界は狭く、小さいけれど、日常生活や友達との遊び、メディアから入ってくる情報を通して、子どもながらも何か感じているはず。
そういう時期に、やりたくないのに無理やり机に座らされ、風化した知識(暗記もの)を教えられても、勉強がいやになるだけ。
子どもが自分の目で見て、体で感じたこと、それこそが本人のベースになる。
家の仕事を手伝わせるのも一案。
親に「ありがとう」と言われれば、子どもながらも達成感を得る。
「頼りにされている」と感じさせる、「頼られている」という感覚を味わわせること。
それが大切で、そのとき、子どもは「生きがい」につながるものを感じているはず。
中学時代に何を身につけておけばよいか
「何事も人のせいにしない自分になったかどうか」
人のせいにしない体質になった生徒は必ず伸びる。
体質というのは、自分の血肉になっているということ。
道具を使える人と「こういう道具がありますよ」と教えられて初めて知る人とでは、スタート時点ですでに差がついている。
「言われて知る」というのと、「すでに自分の身についている」というのでは、ものすごく差がある。
学んだことを自分の頭で論理的にとらえ、納得できるまで工夫し、考えてみる。
時間はかかるが、このような学習を続けていると次第に習慣となり、体質化していく。
ちゃママまとめ
「男の子を伸ばす教育」というタイトルですが、男女問わず、「こういう教育方針の学校で勉強することができたら、人としてたくさんのものを得られるのかもしれないな」と思いました。
開成学園はこんな学校だよとか、中学・高校時代に養っておきたいこととかが中心でしたが、学歴や学力に関係なく、こんなことを意識して生きる大人が増えたら、日本はいい国になりそうだと思える内容でした。
教育って大事。
そして、家庭では子どもを信じて長い目で見守り、愛情を注ぐこと。
わたしでも結構スラスラ読めたので、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。